WORKMILLインタビュー掲載
Lecture
WORK MILLによるインタビュー記事がWEBマガジンに掲載されました。このとき同時に渡航100カ国目、この実証実験をはじめてから51カ国になりました。
特別なことはしない。会社員でありながら「年間150日を、旅をしながら働く」を実践するために行ったこと(後編)
とても分かりやすくまとめてくれたインタビュー記事を客観的に眺めたり、その後の編集長や記者さんや記事を読んで下さった方々とのやり取りで改めて気づかされたこともあり、100カ国の節目に自分がしていること、したかったこと、目指している世界を言葉にしてみました。
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【したかったこと】
①ファールラインを確認する
●記事にもあるが、私は決して自由を求めて「奇をてらった働き方」をしたいのではなく、むしろ誰だって望めば従来のルールや就業規則の範囲内でも「望ましい働き方」をつくれるという証明がしたかったのかもしれない。
●スポーツマンらしくいうと、『ファールラインを確認する』という行為に似ている。もちろんファールをする気はないけど、世の中のルールは大半が曖昧なものだから審判によって判断が異なるのも周知の事実。
●小屋でも修論最優秀賞取れるんですねとか、面接でゴリゴリのロックをかけていいですねとか、手描きスケッチでも最終納品でいいんですねとか。「言われてみればありかも」という確認を一番最初に取りに行って前例をつくり、後に誰かが似たような壁を越えるとき、過去よりももっと選択肢がある世界をつくる人でありたかったんだと今にしてみれば思う。
②自由は不自由だ
●だから自分が自由だと感じた事はあまりなくて、時に冷たい目で見られてきたし、どちらかと言えば不自由だった。こんなことしない方がずっと、自由な感覚を持って生きてこれたと思う。
●そんなに辛いのにどうしてそこまで?という質問も時々されるけど、すべてはデザインが好きだから、デザインをしたいから。デザインという価値提供を出来るフィールドを広げたいから。
③それは誰にとっての「当たり前」か
●昔から『普通は◯◯だ』という既成概念にとらわれたり同調圧力に縛られることに極度の嫌悪感を抱いてしまう傾向があり、思い返せば小学生の頃から女だから赤いランドセルという暗黙のルールがすでに不満だった。
●かといってピンクや紫を背負おうとは思わなかったんだけど、赤いランドセルは小2で背負わなくなり、小3の頃に購入した習字道具は黒を選んだ。
●ついでに言うと、昨今話題?の選択的夫婦別姓制度ですが、改姓は女がして当然、別に旧姓で働いてもいいよ、とかどの口で言ってるんだと思っているし、苗字変えられないなんて覚悟がないとかは、経済面または精神面で誰かにぶら下がらないと生きていけない人間の発言だと思ってる。覚悟なんて人それぞれでしょう。私には私の覚悟があるんだよ。とこれは完全に余談。ちなみに私の姓は全国に200人しかいない。
④自分が選択した今を、覚悟を持って『好き』と言う
●現行法やルールに縛られど自分が最も望ましい生き方や働き方は達成の大小あれど誰だってつくっていけるし、もしそれが叶わないのなら、想いが弱いか手法を知らないかなのだ。
●そんなに望んでいないなら、わざわざ冷たい目を向けられに行くことはないので、その道へは行かないで良かったんだと思う。今いる場所は過去の自分が選択してきた延長線上にあるのだから、覚悟を持って『好きだ』というべきだし、不満を言うぐらいなら違う道を探しに行けばいいのだと思う。
●繰り返し言うが、本当に願えば「望ましい生き方/働き方」は実現する。実現する方法は、世界のどこかに必ずある。その1つの方法を探ってみたかった。『ファールライン』が広がったのかは、そう遠くない未来に分かるはず。
【やっていること】
①体系的に世界がどうなってるか知っている価値の証明
●よく「いいもの見た分だけ発想が豊かになりますもんね!」と言われるが、まぁそれも間違いではないが、目的の好事例や話題の建築やイベントを見に行くというより、『体系的に世界がどうなっているか捉えに行っている』という方が正しい。たまたまその好事例や話題の建築やイベントが近くであれば意気揚々と出向くという順序。
●「なんでそんなところに行くの?」と言われて「え?行ったことないからだけど?」というと不思議な表情をされることもあるが、ちゃんと説明しようとすると上記のような理由。コネクティング・ドッツへ理解と許容が、もう少し広がればいいなと願っている。
②アフリカにだってインプットはある
●「なんでアフリカに行く必要があるんだ」と得体の知れない匿名の誰かに言われたことがあるが、組織を救うために強いられた大量の休日出勤の代休消化を取得し自費で行くことは誰かに迷惑をかけたのだろうか。髪色を大胆に変えてアフリカ行かなければ回復しないくらいの事情を持つ時も、人生にはある。人の想像力というものは、意識していないと結局自分の視点から出られないのだ。
●ちなみに「アフリカにインプットがない」という思想にだけはかなり強く反論した。素晴らしい場や空間や急成長している市場など、未来のヒントがたくさんある。「アフリカに行く必要がどこにあるのだ」と視野の狭い固定観念でしか物を言えない人間には、ダイバーシティとインクルージョンが求められるこれからの時代にデザインすることなど出来ないと思う。
●クソ真面目に石橋叩きながら自分のワークスタイルを築き上げてきた自負があるし、旅を言い訳にしないために成果も下げていない。慣習にないとか前例がないなどの理由になっていない理由で軽々しく足を引っ張る前に、どこの何に違反しているのか調べてロジック組んでから指摘してこないのなら聞く必要はないし、自分が間違っていると納得できたらすぐに修正するマインドは持っていなければならない。実証実験である以上は、正しいと思うことは素直に真摯に受け止める覚悟を持っている。
③『視野を広げる』ではなく『視点を増やす』
●『視野を広げる』というより『視点を増やす』という行為に近い。だからまだ見ぬ風景に出会いたいし、狂ったように渡航国数を増やしてきた。
●これはエスノグラフィーの思想に似ている。その人自身を観測器にして多視点で観察する。「深く」ではなく「厚く」記述する。ジャッジメンタルではないことが重要である。(建築・空間・場をデザイン出来る)エスノグラファーになりたいし、正確に言うとそうなりたいと願ってたけどやっぱり私の一生ぽっちじゃ無理ですよねーと言いながら死にたい。『宇宙観測器』みたいになりたい。
【ワークスタイルはどうデザインするか】
①ロジカルクリエイティブということ
●WORK MILL編集長に「想像してたよりずっとロジカルなんですね」と言われて、そうなんです、私こう見えて超ロジカルでクソ真面目なんですよと嬉しくなった。修士設計で小屋をつくって大学院を卒業するために延々と古典文法読解をして、論文100ページ書いた。そんくらいクソ真面目。あの時から本当に人格変わってないと改めて感じている。
●『ロジカルクリエイティブ』は常に意識していて、ロジカルに現状把握や課題を整理してからではないとクリエイティブワークのジャンプ力が足りないし、クリエイティブな作業ほどロジカルにと思っている。右脳の機能を最大限効果的に引き出すために、左脳を丁寧に整理整頓させておくという感覚と言うか、がむしゃらにスケッチする前にピカピカに掃除する感じだ。
●自分がデザインにおいては「積み上げタイプ」ではなく「神待ちタイプ」だという自己認識もあるので、待ち時間の質向上のためにそうしている節もある。ちなみに新規ビジネスである一定の成功をしている人は総じてクソ真面目で人当たりが良いという統計がある。
②『生産性』に「方程式」はない
●『生産性』といえるものに万人に通用する「方程式」はない。(よく聞かれるけどこれだけは即答している。)
●万能薬みたいな方程式はないのだが、その人(やその組織)の現状や望ましいと思う姿や幸福は何かを丁寧に観察して紡ぎ出していくと、「オリジナル方程式」が出来上がる。自らの現状を改めて見つめ直すのも苦痛だし、未来を想像するのも億劫ではあるし、これこそが望ましい姿だと言葉にするのも覚悟がいるから、現状維持でいっか、となってしまうことは少なくない。簡単に答えが出ることではないから。
●海外を旅しながら働いていた2年間、私は自分オリジナルの「生産性方程式」を仮説としてつくり、それに従いログをつけ続けてきた。この仮説はデザイナーとかクリエイティブとかに関わる方々に主に適応するが、その間にも様々な企業と仕事をさせてもらってきたので、いくらかは「体系的に知っている」状態はつくれていると感じている。
③定性的な情報を定量化する
●残業時間が減った、有給取得率が上がった、離職率が下がったなどで成果を示すのは数字にされると誰にでも理解がしやすくなるからで、生産性を推し量るには間違っていない定量データである。しかし、上記のものはあくまでマイナスを±0にしたものであって、プラスにした訳ではない。それではプラスの定量データはいかにして取得するのか、ここに今多くの企業が乗り出しているブルーオーシャンがあるのだ。
●②において方程式をつくれれば目に見えない『生産性』の定量データを取得する方法は意外とたくさんあって、その組み合わせによって可能になっているが、包括的なものはないのでそのアレンジメントにこそ技術が必要になる。私は仮説に則り、オリジナルの方法で(半ば無理矢理)数値化してきた。被験者n=1ではあるが2年間のロングデータはおそらくいま世の中にそれほどないと思われる。
●「閃きが多い」だの「チームアップができた」だのと定性的に語ることも出来るし、ボーッとしていると詩的な文章書きがちなのでむしろ得意とするところだが、数値化に拘ってきたのはワークスタイルデザイン業務で様々な人に出会ってきた中で、数字にすると波及範囲が広く、端的に言うと承認がおりやすいという確かな実感があるから。プレゼンテーションや論述の最初に「◯◯を××とするには3つの方法があります。」とか「世の中には2つに大きく分類される。それは△△か、△△ではないか。」ではじめるそれにも通ずる。
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#WORKSTYLE #LIFESTYLE